大判例

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高松高等裁判所 昭和28年(ネ)193号 判決

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が宇和島市丸の内一番地の四三四、宅地百三坪二合につき、訴外吉田亮太郎に対して昭和二二年一二月八日附でなした、換地予定地指定処分及び昭和二三年二月二六日附でなした、換地予定地変更指定処分は無効であることを確認する」との判決、もしその無効が認められないときは、予備的に「右各指定処分を取消す」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において「本件行政処分に対し控訴人は昭和二三年二月二七日附陳情書を宇和島市長に提出したところ、同年四月六日附で市長から不採択の通知があつた。その陳情は訴願として取扱うべきものである」と述べ、被控訴代理人において「右事実は争わないが、それは単なる嘆願であつて、訴願ではない」と述べた外は、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する(各証拠省略)。

三、理  由

一、被控訴人の本案前の抗弁について。

被控訴人は、控訴人が所有権の届出をすれば換地予定地の指定を受けられるから、その届出をせずに直に出訴するのは、訴の利益がないと主張するが、本訴は控訴人が、換地予定地指定当時から従前の土地の所有者であると主張して、指定処分の効力を争うものであるから、訴の利益があることは勿論であつて、仮に被控訴人主張のような他の便法があるとしても、本訴提起について控訴人にその利益がないとはいえない。右抗弁は失当である。

二、本案について。

被控訴人が特別都市計画事業として、宇和島市丸の内一番地の四三四宅地百三坪二合(以下本件土地と称す)を訴外吉田亮太郎の所有として、同人に対し昭和二二年一二月八日附で換地予定地の指定、二三年二月二六日附でその予定地の変更指定をしたこと、同市丸の内一番地の五五宅地二二三坪二五が以前訴外合名会社堀部本店の所有に属し、その一部は道路に編入され、残地一七五坪七四が一番地の五五宅地七二坪五四と本件土地とに分割せられ、前者は訴外船田長太郎に、後者は控訴人にそれぞれ昭和二三年四月二六日前記合名会社から所有権移転登記が為されたことは、当事者間に争いがない。

控訴人は、昭和二一年九月七日右宅地二二三坪二五を訴外船田長太郎と共同で、合名会社堀部本店から買入れ、その一部たる本件土地を控訴人の単独所有としたもので、本件行政処分当時は控訴人の所有であつた旨主張するが、甲第一、二号証中、本件土地の買主が控訴人である旨の記載は、原審証人浅井徳蔵の証言によると事実に合致しないことが明らかであり、甲第五、八号証も原審証人浅井徳蔵、加納綱雄の証言に照し右主張事実を認めるに足らず、その他これを認めるに足る証拠はない。かえつて右両名の証言、同加納の証言により成立を認める乙第二号証に、成立に争のない甲第三、四、五、九号証及び原審検証の結果を参照すると、昭和二一年九月七日前記合名会社から右宅地二二三坪二五を買受けたのは控訴人の父吉田亮太郎と船田長太郎であつて、控訴人ではない。亮太郎と長太郎は右会社と連名で、昭和二二年一一月七日その売買を被控訴人に届出で、且当時両名の間で買受土地を事実上分割して本件土地を亮太郎の所有にしていたので、被控訴人は亮太郎の所有として本件換地予定地の指定並にその変更指定をしたのである、その後前記会社から昭和二三年四月二六日所有権移転登記をする際亮太郎の求めにより、同人名義とする代りに控訴人名義に本件土地の移転登記を受けたものである。かえつて控訴人は昭和二二年一一月に本件土地の地上権者として、被控訴人に届出たので、被控訴人は控訴人に対し地上権者として本件換地予定地の指定を通告していることが認められる。従て右移転登記以後は本件土地が控訴人の所有になつたものと推定できるが、その以前に之を亮太郎の所有として為された本件行政処分は正当であつて、控訴人主張の無効原因は存在しないことが明らかである。

次に本件行政処分の取消を求める部分につき審按するに、その訴には県知事に対する訴願を経由する必要があるが(特別都市計画法二六条、都市計画法二五条、行政事件訴訟特例法二条)、成立に争のない甲第十号証によると、控訴人が昭和二三年二月二七日宇和島市長宛に陳情書を提出し、同年四月六日同市長から不容認の回答を受けたことが認められるけれどもその陳情を訴願と解することは困難であり、他に知事に対し訴願していないことは当審証人加納綱雄の証言及び同証言により成立を認める乙第四号証の一、二により明らかであるから、本訴は不適法たるを免れない仮にその点を不問に附し、内容につき審按するに、控訴人は本件換地予定地の指定は、その主張のような理由で宅地の利用価値を無視し、違法であると主張するが、原審検証の結果によると、本件換地予定地は、その大部分が従前の土地の大部分と重なるように指定されている。従前の土地の内、北及び西側の大通りに面した部分が若干削られているが、それは道路拡張の敷地になるものであるから、残地の利用価値に影響しない。

従前の土地の西南隅の空地が削られて、裏庭から西側道路に出入するのが困難になつた外は、宅地全体として、その利用価値に大きな差異がないことが認められる。のみならず成立に争のない乙第三号証及び原審証人加納綱雄の証言によると、本件土地は以前は交通の不便なところであつたが、区画整理後は、内港の埋立、幹線道路の貫通により繁華となり、地価が著しく上昇していることが認められる。これらの事情を考合すると、本件各処分は控訴人主張のような違法があるものと考えられないから、その取消を求める請求もまた理由がない。

よつて控訴人の請求を排斥した原判決は相当であるから、民訴法三八四条九五条八九条を適用して、主文の通り判決する。

(裁判官 前田寛 太田元 森本正)

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